荷物の軽量化

 仕事柄、書類とPCなどの機材諸々を持ち歩く事が多いです。最近ではお客様のミーティングルームに大型のディスプレイやプロジェクタが設置されているのが珍しい事でなくなってきて、大きな荷物が一つ減るので助かっています。時には、長期のプロジェクトになると関連書類が増えて、バインダの厚みが5センチくらいになる場合があります。そんなときは全部持ってあるかなくてよいように、できるだけスキャンしてEvernoteやクラウドのストレージへ保管しておくようにしています。紙の情報をデジタル化してまとめたり軽量化する手段は増えてきたのは本当に助かっています。お客様に資料を送る場合にも、PDFファイルを用いる事も普通になってきました。

 もっぱら自宅の仕事部屋ではMacに外部ディスプレイを繋いでいます。広い作業スペースがあると関連する「資料」をざっと並べて仕事ができるので効率が良いです。そうやって準備したデータや印刷した資料を外に持ち歩くときに、TUMIのブリーフケースが長年の相棒なのです。頑丈な作りでキャパが大きいバッグに目一杯機材と資料を詰め込むと10キロを超える事もあって、大玉のスイカを背負っている感覚になってきます。パッキングでは、肩掛けにしてみたり、コロコロ型のバッグを使ったり、バックパック型でやってみたりと時と場合でバッグの種類も増えてしまいました。
それでも、形を変えても重さは変わらないのでデジタル化と機材の小型化と軽量化で負担を減じるようにしてきました。

 先様の状況にどのようにでも応じられるようにするには「基本の装備」をいつもどおりの構成で固めておくのは心理的にも安心だからなのです。さらなる身軽さを実現するには、いよいよと最後の大物はパソコン本体とACアダプタの総重量になってきました。ACアダプタはFINSIXという小型で65W対応ながら本体が85グラムの汎用ACアダプタを好んで使っています。このあたりはチリツモなのですが。常用しているMacBookPro13インチもレノボのX1カーボンも数世代前のモデルですが、私の仕事内容なら全く問題ない性能です。ただ、最近の機器と比較して、性能と重量のバランスでみてかなわない。各社のモバイルPCを眺めると、1キロを大きく下回るのにCore i7が載っていてストレージはSSDが当たり前です。現在の機材がまだまだ使えるので悩ましいところですが、身体の負担と気持ちのことも考えると、手持ちで持ち歩いて使う事に特化したパソコンにそろそろ入れ換える時期のようです。目標は持ち出し機材の構成を見直しながら、減量目標を全体で1キロに近くなるようできるだけ軽量化する、という方針で検討する事にしました。さてさて、どうなることやら・・・。

ー小暑ー

人材を活かすということ

売り手市場の中で、働き手の不足が事業の継続を危うくしかねないという笑えない現実がある。その一方で一括採用した新卒者は三年目に3割から4割が離職しているという統計が出ている。やめる側にしてみれば、合わない仕事に執着しても、うまくいく可能性は高くないと思うのは自然な帰結か。だが転職にはリスクが伴う。採用した企業にしてみれば、先行投資を含め多大なロスを被る。果たして、お互いに利のないこんな実情はあって当たり前の事なのだろうか?

働き手に期待されるのはプロフェッショナルとして、投資に見合うリターンを提供できる仕事力だろう。人材採用をする企業としては、役割責任と期待成果を明示し、それを実現できるかどうかを見定めて人材を採用し任用するわけである。ところが、年功序列と職能という人に仕事がついてくる考えに慣れ親しんだ「空気」の中で、仕事はそれに相応しい能力と周囲の理解を前提として人材を任用しうるだろうか。以前から抜擢人事はあるわけだが、いわば特例的な扱いだろう。だが、それではもう会社が成立しない。仕事ができる人にその責任を担ってもらう、その前提をはっきりと約束事にできるかどうかがこれからの企業存続の分かれ目のように思う。

一定の期間で働く雇用契約で事業継続をしていくと日本では想定していないと思う。現状でも期間の定めない雇用契約が正社員である。だが、ゼロベースで仕事を創っていける人にとって仕事があるからその企業で働く意義を見出す、という考え方を持っていることも少なからずある。やりたい事を実現できるのであれば、規模や場所には拘らない。働き方のスタイルにも多様性が拡がっている中で、一つの器に縛り付けようとすること自体に無理があるのではないだろうか。

仕事をしてもらうために人を雇うのだが、採用を進めるプロセスで人材と企業の双方でこの点がどれくらい明確になっているかどうかが、入ってからの本番で肝心なはずなのだが実情はどうなのだろう。

ー夏至ー

職務をどう定めるか

 やりがいのある仕事に就ければ、その人にとってモチベーションにつながる要因となります。であるがゆえに、仕事の内容を構成する職務特性を明示しておくことは重要なのです。職務はさまざまな個別の業務の集合体のようなもので、それらによって構成されると言えます。職務の構成要因に関する理論の一つとして、これを取り上げたJ.R.ハックマンの研究によれば以下の5つの中核的職務特性を用いて説明できるとされます。

(1)技能多様性:どの程度多様なスキルや才能を活用できるかといった程度
(2)タスク完結性:仕事全体や部分であっても、それを完結させることを求められる程度
(3)タスク重要性:職務が他に与える影響度をいっていて、インパクトという表現もある
(4)自律性:自由度、独立性、裁量範囲などがどの程度与えられているか
(5)フィードバック:仕事の結果が、その仕事を担う個人にフィードバックされる度合い

 さらに、職務が与える潜在的な動機づけ要因をスコアにできます。前述の各因子を関連付けて数式化したものがと以下となります。

((1)+(2)+(3))÷ 3 × (4) × (5)

 職務要件定義書では、職務に必要な能力や経験、知識、そして成果責任と権限といった3つの要素について記述するテンプレートが多かったのですが、これは概ね先ほどの(1)から(4)と関連しているように思います。職務の多様性を段階的にみていって、職務の内容が限定的であって定型的なところはから始まって、徐々に職務の範囲が広がって多岐にわたり、結果のもつ影響度が大きくなるにつれて各因子の度合い(スコア)が大きくなっていくと考えられます。

 興味深いのは、仕事の成果に関してそれが個人にフィードバックされる度合いが潜在的な動機づけに影響しているところです。自律性は責任と権限の両面を含む内容を併せ持つでしょう。さらに、その人が自由裁量で取り組める程度が高くなれば、結果に対して個人的な責任を実感する程度も増していくという考え方に同意します。組織形態が目的に対して流動性をもって取り組む自律性を求めるほどに、戦略的な役割と成果責任がはっきりしていて、状況に俊敏な対処をとれるだけの裁量権があるとしたら、その仕事は自分の腕で創っていく自分自身の事になっていきます。

 そして大事なことは、自律的かつ合目的的な動きを促進するうえで、結果のフィードバックを受ける程度が高いほど、達成感や満足感と言った内的報酬を受け取ることの度合いを大きくなると思われることです。チームというユニットであれば、仕事を進めていく過程での共有とコンセンサスの程度が、共通の成果から得る共感しうる内的報酬も高まるだろうと想像できます。まるでスポーツでチームが勝利したときの喜びや感動と同じと言ってよいでしょう。

 これからの働き方改革で進められるであろう職務のデザインと組織戦略を進めていくうえで、仕事と人の関わり方、そして適所へ適材を任用し、その人に「やりがい」を持ってもらえるような仕事の定め方の参考になるのではないでしょうか。

ー芒種ー

ビジネスリーダーの資質と人材の育成

 経営やマネジメントに関わることは、正解のない課題に取り組み、仮説を打ち立てながら判断と決断を適時に行うことが求められます。このような予測不能とも思える状況に素早く適応しながら経験したことを通じて学びを得ていく能力、さらにいえば資質に近い能力は人材のポテンシャルを推し量る上で最も重要な要因と言えます。業界用語的な表現ですと、経験や体験を通じて即座にそこから学び取る力をラーニング・アジリティーと呼びます。不確実性が高くかつ多様性の拡がりが進む現在にあって、将来を担うコア人材を見定めるキーとなります。
 キャリア形成に於いて、職務を通じて明確な成果をだし、そのプロセスがどのようであったかを振り返ることが有効です。ラーニング・アジリティーとはいわば経験した出来事や状況から、その因果律や仕組みといったものを知恵として速やかに構成することができるような能力と言えます。これが後天的に学ぶことができる能力であればこの領域を伸ばしていく余地はありますが、資質に近いものであって、その人が『機敏な学習」能力を有している人材であれば、将来のコア人材となる可能性が高いとされています。タレントマネジメントにおいてこの人材群を、キーリテンション人材とかPivotal Talentという呼び方で位置づけられます。
 ところで、資質は顕在能力として発揮されて初めて価値があるわけですから、個人の能力とキャリア開発と企業の中・長期的な展望とを関連付けて進めて行く必要があります。キャリア・ラダーのある段階を過ぎてからは、全体の均一な研修などよりも、OJTとかアクションラーニングという括りで提供される能力開発の機会がより効果的でしょう。一般的には早期にキャリアプランを明確にして、有望な人材とのエンゲージメントを強める方が望ましいのではないでしょうか。具体的な時期は育成方針やキャリアプランのポリシーによるわけですが、新卒であれば入社3年目から4年目あたりに将来を展望するキャリア開発イベントを設けるケースがあります。そうすることで将来有望な人材の留保(退職リスクを下げる)につなげられます。さらに一対一のコーチングならば、コーチは職務遂行を続けるコーチィーと緊密に連携しながら行動変容と成果行動の発揮に向けた支援を継続していけます。目標とする指標に向かって実際にどう推移しているか、個人的なフィードバックは学びを確信に昇華する機会です。社内メンターや外部コーチという位置づけにある人から指南を受け、学んだことの実践に有効なきっかけを適時かつ適正に獲得しうるでしょう。機敏に学ぶ機会を増やし、ラーニング・アジリティーを仕事能力として顕在化するべく鍛えていくわけですね。

 新卒だけでなく、即戦力を期待される中途社員であっても育成やパフォーマンスを高めるための中軸となっているのは、職務の遂行です。採用の入り口が違っていても、人材の資質としてラーニング・アジリティーが高い人材は稀少かつハイポテンシャルとみてよいでしょう。
先ず適所(フィット率の高い職務)への任用が第1ですが、これにコーチングのように人から学ぶこと、そして職務遂行に求められるスキルや知識を習得する機会を提供(人材への投資)を計画して、そこからのリターンをKPIで見える化しておくことです。キャリア志向がより明確な中途採用社員ならば、自分を活かそうとしてくれる機会と支援を好ましく受けとめる可能性が高いです。よく知られる学びの黄金律として、職務:70%、人からの指南:20%、Off-JTのような機会:10%という比率が最適であるとも言われます。
 ホリスティック(総体的)な視座から人材をみていくと、個々人のキャリア志向が仕事への取り組み動機や成果達成に影響があると見えてきます。その人が有している能力や潜在的な可能性を引き出し、職務に結びつけ、やる気をもって取り組むようになるには、どのようなことが『動機」になるかも組織とそこに働く人の双方で了解できているかどうかを考えておくのも重要だと思います。

ー小満ー

成果をだす能力について

仕事で発揮する能力のうち、顕在化しているものとそうでないものに区分できます。自社のなかに優秀な人材と言われる群があって、その人材に共通してみられる行動があるとすれば、成果をだす能力として傾向を見いだし得ます。
自社の状況に相応しい行動をとれる、これはコンピテンシーと同じ意味合いですね。これらの事例を多く集め、汎用的に用いられる成果行動に分類していくと、体系的に構成したコンピテンシーの一揃えとして整理できます。多少の差異があったとしても、概ね同様の用語やその定義づけしたものが評価の尺度となって、人材採用や社内の異動、昇進昇格、さらには将来の幹部候補者を育成していく人事施策へ展開できるのです。とは言え、企業を取り巻く内外の環境は変化しますから、これらの成果行動の項目を優先順位の高いものに並べ替えたり、定義している内容自体を変えたりすることも時には必要になります。
一般的な例として、マネジメント層に求められるコンピテンシーをいくつか以下に挙げてみます。
(1)リーダーシップ
(2)対人関係
(3)コミュニケーション
(4)戦略的思考
(5)業務遂行管理
(6)モチベーション
(7)セルフマネジメント
これらの成果行動について、実際にどのような行動やスタイルを含んでいるかを記述して見える化できていれば、期待されていることがどのようなことなのかが誰がみてもわかり易くなります。たとえて言えば、家のような構造物を組み立てるときに用いる「物差し」がセンチなのか鯨尺なのかそれともインチなのか、一貫していることと、長さや大きさについて定量化できるからちゃんとしたものが築かれるのと似ています。
ところで、職種によって求められる能力要件や仕事スタイルは異なりますから、上手く仕事で成果を出す上で働く人自身が、果たしてその仕事が自分に向いているかどうかを理解しておくことは重要です。転職が特別なことではなくなった今日では、機会に恵まれていても自分自身の中に職業選択の基準、すなわち己を知る物差しを持っていてこそ力を速やかに発揮できる職務に就けるでしょうし、よく言われる発揮されていない能力という意味で、ポテンシャルを顕在能力として引き出しうると思います。どのような職業観や価値基準をもって仕事を選ぶか、企業を選ぶか、更に言えば自分の価値を活かすチャンスをどうやって掴み取るか、いっそのこと起業して自分自身の将来を創り出してみるという選択もありますね。
どこで、どんな仕事をやっていきながら、何をなそうとしているのか、個人も企業も同じように成長と変化を継続していくでしょうから、時折立ち止まって遠くを見通してみるのもいいと思います。そのとき手の中にキャリアと将来の生活に関する「地図」を持っておければ、荒野が広がっているように見えるフィールドの豊かさに気づくチャンスが増えるのではないでしょうか。

ー立夏ー

人材?それとも人財?

企業で働く人を経営資源として位置づけたとき、リソースとみるか、アセットとみるか。企業組織が働く人と事業遂行をどのように結び付けて掌握しているか、時間軸にそって二つの対比で捉えてみるとどうだろう。
短期的な視点をもってすれば、事業や業務を遂行するために用いられるリソースとしてみられるだろうし、長期的な視座をもってして継続的な成長や変化において人が内包する可能を見出せるのであれば、それは何物にも代えがたいアセットとみられるだろう。
一方で、働く側すなわち一人一人がどのような意図(キャリア志向)をもちながら、その組織や職務に携わっているかという事がある。ライフ・プランとキャリア・プランはその人の状況によって変わりながら推移するものだろう。自分自身の可能をどう実現しつつ、またはどのような暮らしを実現しようと思うのか、その意図と働く場である組織や職務そのものと相互の結びつきを築いていくことだろう。
専門性で腕を磨いていきながら働き手としてキャリアを積み上げていくのか、合目的的な組織において継続的な事業遂行に貢献できる働き手であろうとするのか。キャリアと暮らしの中で方向性を探りながら選択を続けていくわけである。
ともあれ、自分自身の良さや強みが、市場でどんな「価値」を持っているのかを見定めながら、その「価値」を有用であると認める組織や職務に関わっていき続けられたら、暮らしと仕事の良好な関係を創っていけるのではないかと思うのである。
これから長い連休が待っている時期であるから、立ち止まって過去と現在そして将来を見渡す機会を持つには丁度いいだろうと思う。

ー穀雨ー

企業組織の変化に映るティール組織との一様

組織論を云々する以前のこととして、現実には親方(オヤジ)が率いる合目的的な集団は、達成しようとする事柄に向かって組織化されます。とある企業との関わりを通じて浮かんだ、強い組織とはなんだという問いかけに対して、かなり荒っぽいがそんなイメージが湧いてきたのです。
その組織にあって、目的へのコミットメントは集団のリーダーであるオヤジへの畏敬と信頼が基盤です。そうやって最初は我の強い連中がゴリゴリやっているうちに、バシッと締める親方(オヤジ)の号令一下、上意下達で動いていた集団から、やがてそれぞれの役割や課業が決まって目的に向かって自律的に動き始めます。この時点では、個が確立した上での連携よりも、なんとなく集団に溶け込んでいて運命共同体的な集団の結びつきから合目的な個々の行動に結びついていってる、そのような状態ととらえられました。暗黙の共通認識として同質化を望まれているという状況と言えるかと思いました。
ところが、学びを促し多様な発言を許容するリーダーの元で動き始めた組織の面々は、特に若手一人一人が伸び伸びしていて、時に奔放な発言をしたり行動をとったりするちょっと尖った人が出てきたのです。状況が変わっていく様を垣間見つつ、なんだか7人の侍みたいな集団だなぁ、って好ましく思っていました。今日的な変化の早い状況に適応できる望ましい組織の一つに、自律的な個の関係性が明瞭になっていて、ネットワークのようになった組織が構成されて動いている、例えて言えばプロサッカーのチームのような動き方をする形態があると考えます。世にある理論は実践の中にある事実から紡ぎ出されている、そう思えば目の前にいる人や関わりにとても大切な将来の可能がまどろんでいるはずです。さらに言えば、現実に向き合って内なる可能に直感的に気づける人がカリスマティックなのじゃないかとさえ思わされるのです。
企業の変化と成長の局面に関わらせていただき、そこに活躍する次世代のリーダーの姿を垣間見て、着実な歩みを共有できる事は冥利に尽きるのです。

ー清明ー

永く生きることと働くことのバランス

100年を健康に生きるという想定が、人生の時間的枠組みになっていくようです。企業で働く時代はまだ続いているけれど、今のところそこに収まるのは70年ほどです。60歳から65歳へと移行しつつある「定年」という会社との付き合いを考える時間の区切りが、100年の人生設計を考える上でも重要なマイルストーンになるのはまだしばらく変わらないでしょう。
生活の基盤を支えるための働くという行為は、同時に生活そのものであります。だがしかしです、働くということに含まれる使役的な労働という意味に留まらない、もっと幅広い選択の可能があるように思います。生きる事、暮らす事そのこと自体が意味をなしていくような移行期間における在り方がこれからもっと意識されていくのではなかろうかと。そうして働き方や暮らしのスタイルが変化していくうちに、一カ所に集まり統制された機構の中にあって、果たすべき役割を遂行するというスタイルは徐々に古典になっていくのではないでしょうか。
またその一方で、働く環境の多様性は、すなわち個の自立性と相互の関連を維持できる信頼や人間関係が基盤として求められていく度合いが増していくのだろうとも思います。このような考えを巡らしていくと、所得水準などの指標から見えてくるような多くの割合を占めている中間層に「構造的な」変革が展開していくのであろう、ということに至っていきます。
働くという目的のために、立場と場所を獲得しようとするのか、それとも自分自身で切り開いていくのか。このいずれかだけでキャリアと人生をプランするのではなく、両面のバランスをとりながら、自由に自律的に働く事と生きる事をつくり上げていけるようなリテラシーが大切になっていくのではないでしょうか。言ってみれば、展開と収斂、周回を推力とするスパイラルの中心軸にあるベクトルに例えられるような自身の意思で前へ進もうとする動的なあり方です。
「Work as Life」のコンセプトを鍵として、キャリアとライフが渾然一体となって自分の在り方それによって様々なスタイルが生まれていくような、将来の自身の姿を思い描いてみるのは有意義な事だと思います。

ー春分ー

働くこと、仕事との結びつき、そこに求めること

先日、事業経営の先輩となる友人から、彼がたゆまずに探求しているテーマに関して新しい理論に出会ったことを教えてもらいました。働くという社会性が求められる活動と、私たち人として有する個性が生み出す多様性は、お互いの可能性を引き出す有意義な関係を生み出す一方で、懸念や軋轢を生み出しもしています。どうして生きづらいと思うのか、どうやったらよりよき関係を築いているのか、心と身体の状態について洞察を深めていく彼の探究心に、私も強く興味を持ちました。そんな二つの題材についてここで記しておこうと思います。
まず、マインドフルネスとスキーマ療法についてです。そして二つ目は、ポリヴェーガル理論です。この二つに共通して言えることは、現実的に起きている問題の本質を心と身体の状態からアプローチして「改善」しようとしていることでしょうか。そしてそのメソッドのキーワードとして、「安心」と「つながり」の二つをまず上げられると思います。これって当たり前のこと?、そう思えるのですが、だから却って人それぞれに抱えていることに寄り添うのが難しいのではないかと思いました。
これらのことは言ってみれば私に提示された宿題のようなものです。組織と人に関するコンサルテーションを生業とする立場として、仕事とその役割や職務を担う働く人にとって、本当にそれがやりたいことなのか、さらに言えばやりがいを実感できたり、幸せだと感じられるといううのはどういうことか、という本質的な問いを含むのではないかと思いました。
社会で暮らすことにおいて、人は意図を持って行動し、その結果として多くの体験を経てスキルや知識を獲得し、さらに社会における関係性を広げていきます。それは職業人としてその人自身に内在する無形の財産と言えるものでしょう。会社勤めなら出勤したり、最近だとテレワークで自宅にいて仕事をする人も珍しくないです。そんな仕事をする日常にあって、ある時点で立ち止まって今やっている仕事は自分が本当にやりたいことだったのか、そう問いかけてそれまでの棚卸しをしてみることはキャリア形成における重要なイベントになります。現在時点までに形成された「能力」と「キャリア資産」を自身の将来に向けて、どんなキャリア・プランを立てて実践していくのか、そしてどのようなライフプランを築いていくのかを考えられる機会と言えます。
企業というシステムは合目的的な枠組みにそって成立しているわけです。世界にはあらゆる仕事が存在し、企業は星の数ほど存在します。雇用形態や働き方に画一性を求めることは、硬直化した前提でビジネスをオペレートしているリスクを孕んでいるとさえ言えるでしょう。多面的な着想や取り組みを広げようとすれば、「異質な」少数意見も貴重な可能性の端緒となりえます。とは言え、ある従業員が好きなことをやりたいようにやろうとすれば、その行動と組織の目的が合致しているかどうかが問題になるでしょう。
やると決めた事をやり遂げるためにはときには障害を解消したり変革が必要なことが出てきたります。(もちろんルールを破っている時点で別な労務上の問題になりますが)雑ぱくな物言いになりますが、天才や神がかり的な才能とは無縁のこととして、普通のことや当たり前の事を積み重ねていって成果を創り出せると思います。粘り強くやり続けられるかどうか、目的と目標を見定め、例え迂回しながら時間がかかっても継続できるかどうか、勝つまでやり続ければ負けはないと言ったことと通じるのです。
経営者は方針を定めることが重要な責務ですが、企業と働く人の両者が相互理解を得られるようにして、やりたいこととやってもらいたい仕事がきちんと繋がっているかどうかがわかるプロセス構築が必要になります。SWOTのフレームワークは会社の事業戦略を整理するのに便利ですが、事業に関わって働く個人も組織も、それぞれの方針と方向性を把握しながら、「今」と「これから」を見通していくことが大切だと思います。そうやって組織全体でやり抜く力を発揮していけるのだろう、そう思うのです。

ー啓蟄ー

キャリア開発における組織と従業員の立ち位置は?

キャリア・カウンセラー(GCDF)の資格を取得してから数年後となる2008年の春、会社勤めから個人事業主として働くスタイルになりました。その後10余年を経て国家資格となったキャリアコンサルタントへ移行しました。自分自身の事にとどまらず、社会で起こっている変化を肌で感じ、人事関連の問題として、働く人自身の仕事に関する認識のあり方と組織の役割が大きく変化してきたと実感しています。
日本では年功序列と職能制度が基盤となって、生活とキャリアの全責任を企業が負う時代が続いてきたわけです。唐突ですけれど、転職雑誌が出している電車の中吊り広告で、お笑いタレントを用いて「上を目指すことがかっこ悪いですか?」という投げかけをしているキャッチコピーを見ました。そうかぁ、ずっと以前なら、所得、権限、地位、生涯にわたる保障などが段階的に上がっていくことが約束されていると暗黙の約束だったんだと思ったのです。今に至ってその時代とは不確実性が比較にならないほど増してきて、将来予測がたちにくい状況が常態といってもよいなかに私たちはいます。
職場では、自分自身で仕事の状況に適応する能力を高め、継続的に知識やスキルを身につけ、自分のアイデンティティーを自分自身で保っていくような状況ではないでしょうか。自身のキャリアをどのようにプランして、最新のスキル、能力、知識を身につけ将来に向けた準備をしていくかは、ますます働く人自身で行う責任の度合いが増してきています。いわゆるプロフェッショナルとしていつでもチャンスがあれば打って出られるだけのバリューがあってこそ、企業にとっても重要な人材と言えるわけです。そのような人材にはキャリアの選択肢が広がるでしょうし、職業や職務の選択に関する重要な価値観こそがキャリアの志向性を形成していくと言えるでしょう。
そんなプロフェッショナル人材として自分自身のキャリア形成に責任を持っていく必要があるという考え方に、参考となるポイントがあります。
1.己を知る(強み、開発ニーズ、仕事スタイル、興味のある分野)
2.仕事スタイルが周囲にどう受けとめられているか認識をもつ
3.人的ネットワークを築くための取り組みを継続し、自身の幅を広げ続ける
4.最新のテクノロジーを身につける
5.過去にどのような成果を、どうやって上げたかについて把握しておく
6.専門的な職務分野と汎用的なマネジメント能力のバランスを見極めてキャリアパスを選択する
7.自分自身の労働市場におけるバリュー(市場性)をチェックし、不測の事態にバックアッププランを用意する

一方で、企業は有能な人材をどうやって見いだしていくか。そして仕事でチャレンジできる機会提供を行い育成し、スキルや知識を習得させながら人材のバリューをあげる支援をどう行っていくか。時間のかかる人材の育成に取り組みつつ、育てた大事な人材をどう留保しながら事業の継続と発展に関わっていってもらうか。有能な人材ほど企業に貢献してくれる期待は高いと思うのですが、市場性が高いので他社にとっても喉から手が出るほど欲しい人材であるのは言うまでもありません。流動的な労働市場は相変わらず売り手側に有利な状況で、企業と従業員の関係がよりフラットになってきたと考えてもいいと思います。
だからこそ、肯定的な関係を結び、継続的に働く意義を見いだしていくにはオープンで公正かつ公平なキャリア形成支援が重要になってくるでしょう。そのようなキャリア支援に関する考え方に以下のポイントがあります。
1.組織の目標や中・長期の事業戦略に関するプランを明確に伝える
2.従業員自身のキャリア志向に沿った職務分野で成長の機会を提供する
3.職務に必要なスキルや知識、技術などの習得に関して経済的なサポートを行う
4.仕事を通じて、考えたり、試行錯誤できるだけの余白(時間や失敗から学ぶ機会)を提供する

「会社」は目に見えるわけではなく、働く人自身の思いもホントのところが時折垣間見えるくらいなものでしょう。だからこそ、経営の中核を担う立場にある方々はオープンにその企業に働く人との関係を築いていくことが成功の道のように思います。組織と個人の関係を相互理解に立って、まだ見えていない可能性を顕在化するために仕事に取り組めるとしたら、それはきっといい職場だと思えるのではないでしょうか。

ー雨水ー