永く生きることと働くことのバランス

100年を健康に生きるという想定が、人生の時間的枠組みになっていくようです。企業で働く時代はまだ続いているけれど、今のところそこに収まるのは70年ほどです。60歳から65歳へと移行しつつある「定年」という会社との付き合いを考える時間の区切りが、100年の人生設計を考える上でも重要なマイルストーンになるのはまだしばらく変わらないでしょう。
生活の基盤を支えるための働くという行為は、同時に生活そのものであります。だがしかしです、働くということに含まれる使役的な労働という意味に留まらない、もっと幅広い選択の可能があるように思います。生きる事、暮らす事そのこと自体が意味をなしていくような移行期間における在り方がこれからもっと意識されていくのではなかろうかと。そうして働き方や暮らしのスタイルが変化していくうちに、一カ所に集まり統制された機構の中にあって、果たすべき役割を遂行するというスタイルは徐々に古典になっていくのではないでしょうか。
またその一方で、働く環境の多様性は、すなわち個の自立性と相互の関連を維持できる信頼や人間関係が基盤として求められていく度合いが増していくのだろうとも思います。このような考えを巡らしていくと、所得水準などの指標から見えてくるような多くの割合を占めている中間層に「構造的な」変革が展開していくのであろう、ということに至っていきます。
働くという目的のために、立場と場所を獲得しようとするのか、それとも自分自身で切り開いていくのか。このいずれかだけでキャリアと人生をプランするのではなく、両面のバランスをとりながら、自由に自律的に働く事と生きる事をつくり上げていけるようなリテラシーが大切になっていくのではないでしょうか。言ってみれば、展開と収斂、周回を推力とするスパイラルの中心軸にあるベクトルに例えられるような自身の意思で前へ進もうとする動的なあり方です。
「Work as Life」のコンセプトを鍵として、キャリアとライフが渾然一体となって自分の在り方それによって様々なスタイルが生まれていくような、将来の自身の姿を思い描いてみるのは有意義な事だと思います。

ー春分ー