働くこと、仕事との結びつき、そこに求めること

先日、事業経営の先輩となる友人から、彼がたゆまずに探求しているテーマに関して新しい理論に出会ったことを教えてもらいました。働くという社会性が求められる活動と、私たち人として有する個性が生み出す多様性は、お互いの可能性を引き出す有意義な関係を生み出す一方で、懸念や軋轢を生み出しもしています。どうして生きづらいと思うのか、どうやったらよりよき関係を築いているのか、心と身体の状態について洞察を深めていく彼の探究心に、私も強く興味を持ちました。そんな二つの題材についてここで記しておこうと思います。
まず、マインドフルネスとスキーマ療法についてです。そして二つ目は、ポリヴェーガル理論です。この二つに共通して言えることは、現実的に起きている問題の本質を心と身体の状態からアプローチして「改善」しようとしていることでしょうか。そしてそのメソッドのキーワードとして、「安心」と「つながり」の二つをまず上げられると思います。これって当たり前のこと?、そう思えるのですが、だから却って人それぞれに抱えていることに寄り添うのが難しいのではないかと思いました。
これらのことは言ってみれば私に提示された宿題のようなものです。組織と人に関するコンサルテーションを生業とする立場として、仕事とその役割や職務を担う働く人にとって、本当にそれがやりたいことなのか、さらに言えばやりがいを実感できたり、幸せだと感じられるといううのはどういうことか、という本質的な問いを含むのではないかと思いました。
社会で暮らすことにおいて、人は意図を持って行動し、その結果として多くの体験を経てスキルや知識を獲得し、さらに社会における関係性を広げていきます。それは職業人としてその人自身に内在する無形の財産と言えるものでしょう。会社勤めなら出勤したり、最近だとテレワークで自宅にいて仕事をする人も珍しくないです。そんな仕事をする日常にあって、ある時点で立ち止まって今やっている仕事は自分が本当にやりたいことだったのか、そう問いかけてそれまでの棚卸しをしてみることはキャリア形成における重要なイベントになります。現在時点までに形成された「能力」と「キャリア資産」を自身の将来に向けて、どんなキャリア・プランを立てて実践していくのか、そしてどのようなライフプランを築いていくのかを考えられる機会と言えます。
企業というシステムは合目的的な枠組みにそって成立しているわけです。世界にはあらゆる仕事が存在し、企業は星の数ほど存在します。雇用形態や働き方に画一性を求めることは、硬直化した前提でビジネスをオペレートしているリスクを孕んでいるとさえ言えるでしょう。多面的な着想や取り組みを広げようとすれば、「異質な」少数意見も貴重な可能性の端緒となりえます。とは言え、ある従業員が好きなことをやりたいようにやろうとすれば、その行動と組織の目的が合致しているかどうかが問題になるでしょう。
やると決めた事をやり遂げるためにはときには障害を解消したり変革が必要なことが出てきたります。(もちろんルールを破っている時点で別な労務上の問題になりますが)雑ぱくな物言いになりますが、天才や神がかり的な才能とは無縁のこととして、普通のことや当たり前の事を積み重ねていって成果を創り出せると思います。粘り強くやり続けられるかどうか、目的と目標を見定め、例え迂回しながら時間がかかっても継続できるかどうか、勝つまでやり続ければ負けはないと言ったことと通じるのです。
経営者は方針を定めることが重要な責務ですが、企業と働く人の両者が相互理解を得られるようにして、やりたいこととやってもらいたい仕事がきちんと繋がっているかどうかがわかるプロセス構築が必要になります。SWOTのフレームワークは会社の事業戦略を整理するのに便利ですが、事業に関わって働く個人も組織も、それぞれの方針と方向性を把握しながら、「今」と「これから」を見通していくことが大切だと思います。そうやって組織全体でやり抜く力を発揮していけるのだろう、そう思うのです。

ー啓蟄ー