仕事で発揮する能力のうち、顕在化しているものとそうでないものに区分できます。自社のなかに優秀な人材と言われる群があって、その人材に共通してみられる行動があるとすれば、成果をだす能力として傾向を見いだし得ます。
自社の状況に相応しい行動をとれる、これはコンピテンシーと同じ意味合いですね。これらの事例を多く集め、汎用的に用いられる成果行動に分類していくと、体系的に構成したコンピテンシーの一揃えとして整理できます。多少の差異があったとしても、概ね同様の用語やその定義づけしたものが評価の尺度となって、人材採用や社内の異動、昇進昇格、さらには将来の幹部候補者を育成していく人事施策へ展開できるのです。とは言え、企業を取り巻く内外の環境は変化しますから、これらの成果行動の項目を優先順位の高いものに並べ替えたり、定義している内容自体を変えたりすることも時には必要になります。
一般的な例として、マネジメント層に求められるコンピテンシーをいくつか以下に挙げてみます。
(1)リーダーシップ
(2)対人関係
(3)コミュニケーション
(4)戦略的思考
(5)業務遂行管理
(6)モチベーション
(7)セルフマネジメント
これらの成果行動について、実際にどのような行動やスタイルを含んでいるかを記述して見える化できていれば、期待されていることがどのようなことなのかが誰がみてもわかり易くなります。たとえて言えば、家のような構造物を組み立てるときに用いる「物差し」がセンチなのか鯨尺なのかそれともインチなのか、一貫していることと、長さや大きさについて定量化できるからちゃんとしたものが築かれるのと似ています。
ところで、職種によって求められる能力要件や仕事スタイルは異なりますから、上手く仕事で成果を出す上で働く人自身が、果たしてその仕事が自分に向いているかどうかを理解しておくことは重要です。転職が特別なことではなくなった今日では、機会に恵まれていても自分自身の中に職業選択の基準、すなわち己を知る物差しを持っていてこそ力を速やかに発揮できる職務に就けるでしょうし、よく言われる発揮されていない能力という意味で、ポテンシャルを顕在能力として引き出しうると思います。どのような職業観や価値基準をもって仕事を選ぶか、企業を選ぶか、更に言えば自分の価値を活かすチャンスをどうやって掴み取るか、いっそのこと起業して自分自身の将来を創り出してみるという選択もありますね。
どこで、どんな仕事をやっていきながら、何をなそうとしているのか、個人も企業も同じように成長と変化を継続していくでしょうから、時折立ち止まって遠くを見通してみるのもいいと思います。そのとき手の中にキャリアと将来の生活に関する「地図」を持っておければ、荒野が広がっているように見えるフィールドの豊かさに気づくチャンスが増えるのではないでしょうか。
ー立夏ー