昨今ではコンピテンシー(Competency)という言葉も概念も今日的なキーワードから少し遠くなった気がします。けれど、仕事を通じて発揮するその人の「能力」が何かしらの結果(Outcome)をつくり出しているのは変わっていません。その結果というのは、目的や都合に合っていればよい事になって成果になるし、ズレる度合いが多くて違うよなぁ、と受け止められるなら失敗になるのだ。でも行動したことによって得られた結果(事実)は一つなのですから。
仕事に於ける評価というのは事ほど左様に、合目的的な基準によって仕訳している訳です。人ぞれぞれに得手不得手があって、そのやり方も当然様々である。結果に至るプロセスは、あたかも目的地に辿り着くルートが一本道ばかりでない事のように、右往左往、否、試行錯誤しながらルート(行動)を選択してきた結果のはずである。成果を生み出すために発揮される能力を、成果行動と呼ぶのだけれど、行動特性的な見方をすると、人ぞれぞれに強みと弱みを持っていて、結果を導く決め技もそれに応じて多様なのですね。
今更なのですが、私たちが働くビジネス環境はめまぐるしく変動していて、その状況に適応した判断と行動が求められるようなってきていると思います。アジリティー(俊敏さ)が個人単位でも、組織にとっても成功に繋がる成果を創り出す成功要因(KSF)の一つだといえると思います。この俊敏性(迅速に対処する)そのものも成果をだす能力と言えようかと思います。
そして、企業という組織化されたシステムの中では、任された仕事の役割と期待成果の結びつきを把握する全体観、さらには同時並行的に周囲と連携して進めていく仕事力が求められます。目の前にある「仕事」は、出来上がった手順に沿って効率性を高めながら進めていくようなものなのか、それとも成果の品質を妥協せずに求め続けるものなのか、もっと言えば制約された条件の中でその両方を実現しようとする事なのでしょうか。
ものつくりを行う企業を拝見させて頂いて、現場では自動化が進んでいることを実感しています。MCによる高精度加工や多様なパーツを自動組み付けする製造ラインが拡がる中で、単能工的な、出来上がった仕組みで進めれる仕事は代替が一層進むのだろうと推測しています。一方で、人が手をかけて創り出す領域は価値が高まっていくのだろうとも考えています。着想して工夫を実現する領域に仕事の面白さや可能が拡がっているとも言えるのではないかと思います。自立的かつ自律的な働き方、というテーマで考えを巡らせてみると、これは「プロフェッショナル」な人材という言葉が浮かんできて、しっくりするのです。一つの例として、そんなイメージの中にある人材像に結びつくいくつかの成果行動を選んでみます。(それぞれは上位から下位に至る定義に幅がありますが割愛します)
(1)達成重視
(2)イニシアティブ
(3)チームリーダーシップ
(4)顧客重視
(5)概念化思考
(6)セルフコントロール
(7)柔軟性
(8)専門能力
(9)組織へのコミットメント
成果を生み出す行動は、体系化された行動特性をもとに、仕事のスタイルを特徴づける傾向をひな形として見える化できます。言語化でき、意図する期待人材の有り様をモデルとして構成できるので、形式知としてのドキュメントが共有ができて、相互のコンセンサスを得やすくなるはずです。自社の「共通言語」として、事業の発展と継続に応じて仕事力を説明できるフレームワークがつくられるとしたら、「人財」マネジメントを実践するのに効果的だと考えているのですが、御社ではどのようにされているでしょうか。
ー白露ー