職務をどう定めるか

 やりがいのある仕事に就ければ、その人にとってモチベーションにつながる要因となります。であるがゆえに、仕事の内容を構成する職務特性を明示しておくことは重要なのです。職務はさまざまな個別の業務の集合体のようなもので、それらによって構成されると言えます。職務の構成要因に関する理論の一つとして、これを取り上げたJ.R.ハックマンの研究によれば以下の5つの中核的職務特性を用いて説明できるとされます。

(1)技能多様性:どの程度多様なスキルや才能を活用できるかといった程度
(2)タスク完結性:仕事全体や部分であっても、それを完結させることを求められる程度
(3)タスク重要性:職務が他に与える影響度をいっていて、インパクトという表現もある
(4)自律性:自由度、独立性、裁量範囲などがどの程度与えられているか
(5)フィードバック:仕事の結果が、その仕事を担う個人にフィードバックされる度合い

 さらに、職務が与える潜在的な動機づけ要因をスコアにできます。前述の各因子を関連付けて数式化したものがと以下となります。

((1)+(2)+(3))÷ 3 × (4) × (5)

 職務要件定義書では、職務に必要な能力や経験、知識、そして成果責任と権限といった3つの要素について記述するテンプレートが多かったのですが、これは概ね先ほどの(1)から(4)と関連しているように思います。職務の多様性を段階的にみていって、職務の内容が限定的であって定型的なところはから始まって、徐々に職務の範囲が広がって多岐にわたり、結果のもつ影響度が大きくなるにつれて各因子の度合い(スコア)が大きくなっていくと考えられます。

 興味深いのは、仕事の成果に関してそれが個人にフィードバックされる度合いが潜在的な動機づけに影響しているところです。自律性は責任と権限の両面を含む内容を併せ持つでしょう。さらに、その人が自由裁量で取り組める程度が高くなれば、結果に対して個人的な責任を実感する程度も増していくという考え方に同意します。組織形態が目的に対して流動性をもって取り組む自律性を求めるほどに、戦略的な役割と成果責任がはっきりしていて、状況に俊敏な対処をとれるだけの裁量権があるとしたら、その仕事は自分の腕で創っていく自分自身の事になっていきます。

 そして大事なことは、自律的かつ合目的的な動きを促進するうえで、結果のフィードバックを受ける程度が高いほど、達成感や満足感と言った内的報酬を受け取ることの度合いを大きくなると思われることです。チームというユニットであれば、仕事を進めていく過程での共有とコンセンサスの程度が、共通の成果から得る共感しうる内的報酬も高まるだろうと想像できます。まるでスポーツでチームが勝利したときの喜びや感動と同じと言ってよいでしょう。

 これからの働き方改革で進められるであろう職務のデザインと組織戦略を進めていくうえで、仕事と人の関わり方、そして適所へ適材を任用し、その人に「やりがい」を持ってもらえるような仕事の定め方の参考になるのではないでしょうか。

ー芒種ー